春に咲くツツジ、めかぶそぎ、季節ごとに変わる海の仕事。南三陸には、自然と人の営みが重なり合う風景があります。この町に暮らす二人が、制作を通して伝えたいことと、地域との関わりを考えます。
南三陸に暮らす一人として
震災後の活動をきっかけに出会った南三陸町は、今では私たちの仕事と暮らしの拠点です。
最初の頃は、移住してきた人として見られていた感覚がありました。それが、この町に家を建て、子どもが生まれた頃から、「移住者」と呼ばれることが少なくなってきたと感じています。暮らしを重ねる中で、周囲との関係も少しずつ変わってきました。
仕事のために訪れる場所から、日々を過ごす場所へ。家や子どものことも含めて暮らしがこの町に根づくにつれ、関わり方も変わってきました。「移住者」と呼ばれなくなってきたという感覚は、特別な一日の出来事というより、生活を重ねる中で感じた変化でした。
四季と、仕事がつながっている
以前、南三陸町の四季を映像にする仕事がありました。春のツツジやめかぶそぎなど、季節ごとの風物詩を追っていく制作です。
そこで伝えたいと考えたのは、自然と人の営みがつながっていることでした。この時期にはこの仕事があり、この魚がとれ、やがて漁の季節が終わる。仕事の時間と、自然の時間が重なっています。
代表佐藤孝範が表現を考えたのは、暮らしの中に自然が入り込んでいる、その素朴なよさでした。映像でどんな景色を切り取り、どう見せれば、そのよさが伝わるのか。季節とともに働く人たちの姿が、この町を伝える手がかりになりました。
風景の大きさや華やかさだけを追うと、暮らしに入り込んでいる自然のよさは捉えきれません。季節が変わると人の仕事も変わる。そのつながりに目を向けることで、海や山の景色が、人が暮らす場所として見えてきます。四季を追う制作では、そうした日常の中にある魅力をどう映像にするかを考えていました。
受け継ぐ人がいる風景
はなぶさが掲げる「文化的に裕福な社会をつくる」という言葉を、日常の風景に置き換えたとき、安藤仁美が思い浮かべるのは地域のお祭りです。
担い手が少なくなる中でも、思いを持って続ける人がいて、子どもたちが受け継いでいく。祭りが行われる一瞬、ずっと昔から続いているような風景が立ち上がる。その光景に、文化の豊かさを感じます。
そこに思いがあり、引き継がれ、地域に固有のものとして残っていること。伝統的な行事をはじめ、その地域らしさを形づくるさまざまな営みが続いていることを、私たちは大切にしたいと考えています。
お祭りの風景が現れるのは、続けようとする人がいて、次に担う人へと渡しているからです。目の前の景色だけでなく、その景色を成り立たせている人の思いや継承までを含めて、文化の豊かさとして見ています。古くからあるものに限らず、その土地の人が大切にし、受け継いでいるものがあること。それが地域の固有の姿につながるのだと思います。
一緒につくり、頼られる存在へ
まゆ人形劇「甚之丞物語」も、地域の方々やつくり手と一緒に取り組んだ仕事です。安藤仁美にとって印象的だったのは、その脚本でした。地域の歴史を土台に、想像を交えながら物語として伝える。その表現に触れ、自分たちが地域を知る機会にもなりました。
人形をつくる人、物語を書く人、声や動きを担う人、映像にする人。それぞれの力が合わさることで、地域の歴史に出会う入口が生まれます。
これから、地域とどんな関わりを続けたいか。二人で話したとき、安藤仁美から出てきたのは「頼られる存在になれたら」という言葉でした。この町に暮らし、仕事をしながら、持っている力を役立てていきたいと思っています。
地域を伝える仕事は、自分たちが地域について学ぶ時間でもあります。知っているつもりの場所にも、ほかの人の表現を通して初めて気づくことがあります。「甚之丞物語」で脚本に触れた経験も、その一つでした。自分たちだけで地域の姿を決めるのではなく、一緒につくる人の視点を受け取りながら、映像や言葉にしていきたいと思っています。
